―　４　―

気がつくと　ムウはいつのまにか側から消えていて
宮の奥から「カーンカーン」という音が聞こえていた
（あ　もしかして・・・）
瞬は期待しながら　音のする方へ行ってみた


「聖衣の修復ですか？」

「見ての通りですよ　たいしたことはありませんが」

ムウの手元を見てみると　ヘッドパーツが白銀の輝きを取り戻そうとしているところだった

「あ　これ見覚えが・・・そうだ！シャイナさんのではないですか？」

「まさしく　これはオピュクスのヘッドパーツです
このパーツは装飾の要素が強い為　若干強度が弱いのです」

「でも　女性の聖闘士に相応しく　とても綺麗なパーツですよね」

「そうですね　この聖衣は女性が相応しいでしょう」

「ねえムウ　聖衣は古来から引き継がれてきたものなのですよね？
なら例えば　このオピュクスの聖闘士は　代々女性がなっていたのでしょうか？」

「そうとは限らないでしょう　元々はアテナ以外女人禁制でしたし」

「では　女性が引き継ぐことになった時　ムウのような聖衣の修復が出来る人物が
女性に合うよう　作り直したのでしょうか？」

「そのような話は　このムウも聞いた事はありません　おそらくそんな小細工はしていないでしょう
瞬　あなたのアンドロメダの聖衣もそうであったように　聖衣には命があり　進化もします」

「確かに　僕の聖衣も何度か新生しました」

「そう　もちろん私が手がけた時もあれば　アテナの血によって　自ら進化した時もあったでしょう
フェニックスの聖衣に至っては　私の知らぬところで　何度も進化しています」

「そういえば　兄さんの聖衣は会う度に違った気がします」

「聖衣には　私たちの及ばない神秘の力があります
そして意志もあります
かつて　悪に手を染めていたデスマスクに
キャンサーの聖衣が愛想を尽かした事は　あなたも聞いているでしょう」

「はい　その話を聞いて聖衣は守護星座の称号を与えられた聖闘士に従うのではなく
正義に　アテナの聖闘士に従うのだと　感動しました」

「これは　私の想像に過ぎませんが・・・
それぞれの聖衣には必ず専用の箱があります」

「パンドーラ・ボックスとも言うのですよね」

「そうです　私たちは何気なく思っていますが
この箱の中に収められている時　聖衣が自己修復を行なうことは分かっています
そしてその聖衣を纏う聖闘士が　次代に引き継がれる時
聖衣自身がその後継者を　真の後継者として認めたとしたら・・・
その後継者に合わせて　箱の中で進化したとしても　おかしくありません」

「進化・・・それは　聖衣の意志なのですね」

「私はそう考えています
シャイナの前にオピュクスの聖衣を纏っていた人物が
男性だったのか女性だったのか　それは知りません
しかし　今ここにあるオピュクスの聖衣は　彼女にとても似合っています
いえ　彼女に限らず　君も星矢も皆
守護星座の聖衣が似合っていない人など　いないでしょう」

「言われてみると　本当にみんな　その人の為の聖衣と言えるくらい似合っていますね」

「聖衣とは　そういうものなのです
さて・・・帰ってきたようですね　今度は星矢ですか」

「え？あ！貴鬼！それに星矢！」
振り向くと　今度は小さめの袋を抱えた貴鬼と一緒に　星矢が白羊宮の入り口まで来ていた

「はあー　ただいま戻りましたっと！」

「ごくろうさまでした　貴鬼」
ムウは涼しげな笑顔で　貴鬼から袋を受け取り　星矢にも声をかけた

「元気そうですね　星矢」

「ああ　相変わらずってとこかな
下で瞬を探してたら　貴鬼に会ってさ　瞬の奴ここにいるっていうんで・・・」

「ごめんね星矢　僕も　あの後貴鬼に会って　ここに連れてきてもらったんだ
ムウにいろいろ教えてもらってたんだよ」

「ちぇっ　いいなー！どんなこと？」

「うん　今はちょうど聖衣を修復するところを見せてもらっててね・・・」
瞬は　ついさっきまでムウと話していたことを　星矢に説明した

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