― ５ ―
「へえ 聖衣の意志か・・・」
「うん星矢 聖衣って僕たちが漠然と考えているより ずっとすごいものなんだって思ったよ」
「そうだな ・・・じゃあムウ
戦いの中オレ達が窮地に立った時 幾度か加勢に来てくれた黄金聖衣・・・
あれも聖衣の意志って訳か」
「そうですね しかしあのような場合は 聖衣の意志 というよりは
その持ち主の意志の方が大きいでしょう」
「そうか アイオロスか・・・」
「本来ならば 自分自身で駆けつけたい思い・・・
アテナを そして正義を勝利に導きたい思いが 大きな意志となって黄金聖衣とシンクロし
聖衣もその意志に賛同して 君たちの元へ行ったと言えるでしょう」
「何だか聖衣って モノであるけれどモノではない
生きものではないけれど生きているような・・本当に不思議なものだね」
「うーん 奥が深いなー」
「ハッ 星矢！もう日が暮れかかっているよ！」
瞬は 周りの景色が朱に染まり出しているのに気づいて 星矢の肩を叩きながら言った
「あ やば！早く帰んないと 沙織さんに怒られるからなー」
「おや アテナにですか？」
ムウは 少し興味深そうな微笑みで 質問してきた
「いや アテナじゃなくて あれは完全にグラード財団のお嬢 城戸沙織だよな？瞬」
「う うん・・・そうだね」
瞬はためらいがちに笑いながら 説明をした
「今回は 僕のわがままを聞いて 専用ジェットを調達してくれたんです」
「そこまでは いいんだけどさー」
星矢は沙織の真似をしながら続けた
『いいですか？今回貴方たちに貸すのは グラード財団の専用ジェット機です
非常事態が起きた時には すぐに必要なものですから 日が暮れたらお帰りなさい
パイロットは 交代出来るよう 充分につけますからね』
「だぜ？・・・ったく ギリシアを日帰りさせるなんて とんでもないぜ！」
「アハハ！星矢 すっごい似てるーっ！」
「フッ 彼女はアテナとしてだけでなく グラード財団の総帥としても
しっかりしてきたようですね」
ムウはあっさり言ってのけると
「ならば そろそろ出た方が良いですね」
と 貴鬼と一緒に ジェット機のところまで見送りに来てくれた
「今日はいろいろ ありがとうございました
僕 自分の聖衣のこと もっと好きになれる気がします」
瞬は丁寧にお礼を言った
「オレも 聖衣のこと 今までとは違う見方が出来そうだな！」
星矢も嬉しそうに言った
「そう言ってもらえると 話した甲斐がありましたね
多くの聖闘士が 聖闘士でありながら 聖衣についての理解が浅いようです」
「エヘヘ 紫龍にもよく言っときなよ！」
「プッ・・・」
「アハハハハ・・・・」
「貴鬼も言うなあ！」
貴鬼の一言で ４人は一斉に笑いに包まれた
「じゃあ これで・・・」
「またな 貴鬼！ムウ！」
「ええ アテナにもよろしく」
「また来てくれよー！」
挨拶をしてジェットに乗り込み 瞬と星矢は聖域に別れを告げた
ジェットは上昇し だんだんと聖域が小さくなっていく
「やっぱ 時間が足りなかったよなー」
星矢は残念そうに呟いた
「そうだね もっとゆっくりしたかったね」
（でも・・・）
瞬は もっと聖域にいたかった感情とは別に
日本に置いてあるアンドロメダの聖衣に 早く会いたい気持ちも込み上げていた
― 終 ―