―　２　―

星矢と別れ　瞬は１人で　どこへともなしに何となく聖域を歩いてみた
いろいろな場所で　聖闘士を目指す者が　雑兵が　そして聖闘士である者も　訓練に励んでいる
瞬は　その切磋琢磨し合う様子に　心を打たれた

（僕も決して容易に聖闘士になれた訳じゃないけれど
ここ聖域からみれば　温室育ちだったかもしれない
僕は　僕自身に勝てれば聖闘士になれたけれど
聖域では自分だけでなく　周りにも勝てなければ聖闘士になれないんだ・・・）

瞬は改めて聖域の厳しさを感じた
そして　自分や紫龍たちにはない星矢の強さは　ここからきているのかもしれない　と思った

「ハッ？！」
その時　背後から何かが飛んでくる気配を感じた
瞬は即座に振り返ろうとしたが　その猶予もないままに　背中に衝撃が走り
そのまま３０メートルほど前に押し出された

「イタタタ・・・　一体何が飛んできたんだろう？」
瞬は身体を起こすと　背後に不意打ちをくらわせた犯人を見てみた

「ああっ！女の子・・・！」

飛んできたものの正体が　意外にもまだ７､８歳の少女であったので　瞬はびっくりした
少女も瞬を押し出しながら数メートル飛んだらしく　やや後方にうつ伏せに倒れている
瞬は少女に近づくと　手を差し伸べて話しかけた

「大丈夫ですか？」

すると少女は　瞬の手を払いのけ　キッと睨みつけると
自力で立ちあがり　何も言わずに走って行ってしまった

「僕　何かいけないことしたのかな？」

瞬は去っていく少女の背中を見つめながらつぶやいた

「・・・あれ？あれは・・・」

その目線の先に　見知った人物がみえる
瞬は　思わず顔がほころんだ

「貴鬼！おーい　貴鬼ーっ！！」

貴鬼は　瞬の呼び声にすぐ気がついたのか　もう目の前にいた

「わっ！びっくりした！テレポ－テイションしてきた？」

「あはは～瞬　久しぶり～！どうしたんだい？聖域になんか来ちゃって」

「うん　これっていう目的がある訳じゃないんだけど　何となく聖域を見学したくって来たんだ」

「フーン　なら今から白羊宮に行くけど　一緒に行くかい？」

「え？いいの？」

「おいらが一緒なら平気さ！こっちだよ　瞬！」

大きな荷物を抱えた貴鬼は
10メートルくらいずつテレポーテイションしながら瞬を誘導していった

そんな風にして白羊宮がよく見える位置まで来たが
貴鬼は　何故か急に瞬間移動をやめ　瞬と一緒に歩き出した

「あれ？もうテレポーテイションはやめたの？」

「うん　さすがのおいらも　１２宮の近くに来ると出来ないんだ」

「そっか　確か１２宮では禁じれらていたね」

やがて瞬と貴鬼は白羊宮に着いたが　他に気配はなかった

「貴鬼　ムウは？」

「ヘヘン　ちょっと待ってて！」

そう言って貴鬼は全身から小宇宙を立ち上げ　しばらくの間目をつぶっていたかと思うと
突然　ある一点に向かって　拳をくりだした

貴鬼の意識が集中された拳の威力は
そのまま白羊宮を支える柱の一つに衝突するかに思えたが
柱の直前で　まるで花火のように　八方に綺麗に分散された

「いやったぁー！！ヒットーっ！！」

「え？ヒットって？」

瞬は訳が分からずパチクリしていると　エネルギーが弾けた場所から人影が現れた