― ４ ―
「兄さんたちと並ぶ黄金聖闘士か・・・どんな奴なんだろう？」
アイオロスが去った後 目を細めながら呟くアイオリアの言葉に ミロが話をつなげた
「見てみたい・・・けど教皇の間はオレたちの身分じゃ行けないし １２宮にも容易には入れないしな・・・」
２人の言葉を聞いていたムウは 左右の気配を確認すると小声でささやいた
「裏道・・・知ってますよ」
「えっほんとっ？！」
「すごい！さすがは教皇の弟子だ！」
３人は顔を見合わせた
「・・・行きますか？」
「行っちゃうか？」
「よ・・・よ〜しっ！行こうぜ！」
ムウの案内で教皇の間の裏手に出た３人は 気配を殺して教皇の間の石壁の隙間から中を覗いた
そこはちょうど玉座の背に面している位置で
視界の大半は玉座とそこに座っている人物・・・つまり教皇の法衣の袖や裾で埋まってしまっていた
それでも左右の端からは中の様子が判る程度に見ることが出来た
「兄さんいるかな・・・あっいた！」
「俺の先生もいた！ほらっあそこ！」
「しっ！」
無邪気に声をあげるアイオリアとミロを諌めたムウは 再び覗きこんだ後怪訝な表情で呟いた
「・・・こども？」
「え？どこどこ？」
ミロは角度の悪い自分の場所から移動して ムウが覗いていた隙間から中を見直した
「あ！あの金髪？」
先に見つけたのは自分の見ていた隙間から動いていないアイオリアだった
続けてミロもムウと入れ替わったその視界に“こども”の姿を捉え声をあげた
「あっ分かった！ラクレウス先生の隣りにいる奴だな！何者だ？」
「教皇ってムウ以外にも隠し子がいたのかー！」
「私は隠し子じゃありません！」
ムウはアイオリアにパンチを一発見舞いつつ ミロの上から再び石壁を覗きこむと
そこにいる３人共が内心思った言葉をもらした
「まさか・・・」
「でもこの状況で まさかじゃない可能性の方が明らかに低いよ？」
ミロは動揺しながら言った
参列している黄金聖闘士の面々も 驚愕を隠せない表情をみせていたのだ
「まさかって まさかあの金髪が新しい黄金聖闘士？だって僕たちよりも小さい子だよ！」
アイオリアはそんなことないと二人にも自分にも言い聞かせるように 小声ながらも強い口調で言った
「あっ！」
その声は３人同時だった
突然 教皇がその“こども”に向かって光速拳を繰り出したのだ
教皇が本気で放った拳でないにしても
その拳はムウたち３人にとっては まだとても目で追える速さのものではなかった
だが
“こども”は不意に向かってきたその光速拳を
あまりにも一瞬の出来事で一体どのようにしたのかさえ判らなかったが 跡形もなく見事に消滅させていた
そうだ
まぎれもなくその“こども”は黄金聖闘士だったのだ
ムウもアイオリアもミロも 言葉が出なかった
３人共目をそらすことが出来ず呆然としたまま
そのこどもに ミロの師ラクレウスを通して おとめ座バルゴの黄金聖衣が与えられるのを見届けた
就任式が一通り終わると ３人はそのまま誰ひとり口を開かず
とぼとぼとその場をあとにすると お互いろくに目も合わせず別れた