― ３ ―
カミュは天蠍宮を後にし ゆっくりと歩を進めていた
自分の宮を離れ 氷河をひきとめに来たといっても
他の黄金聖闘士がいる場所でどうこうしようとは思っていない
宮と宮を結ぶ階段の途中で何とかしようと考えていた
氷河はさっき双児宮に入ったところだと聞いた
おそらくまだ双児宮にいるだろう
その出先でくい止められれば・・・
そんな風に思っていた時だった
―――――― スンッ！！
一瞬目の前が歪み 空間が開いたような感覚に捕われた
「何っ？！」
しかしカミュは次の瞬間には 空間が歪んだ場所が天秤宮の中で
そこに氷河が飛ばされてきたことを把握していた
「ひょ・・・氷河！！なんという・・・」
これはアテナの導きなのか？
カミュは 氷河との予想し得ぬ早い再会に驚愕しつつ
歩を早めて天秤宮へ急いだ
「う・・・」
天秤宮の中心付近で 果たして氷河は倒れていた
双児宮で相手にした敵に異次元へ飛ばされ ここへやってきたのだろう
（嗚呼・・・キグナスよ・・・！！）
己自身が 氷河にキグナスの聖闘士としての称号と聖衣を授けたものの
その聖衣を纏いキグナスの聖闘士として在る氷河の姿を 初めて目にしたカミュは
思わず目尻が熱くなるのを感じた
（立派なキグナスの聖闘士になったか氷河よ！）
カミュは 何故かその時 はじめて自分の許に来た日の氷河の姿を思い出した
・・・・・・・・・・・・・
「っだがっ！！」
カミュは自分に言いきかせるように表情を改めると
立ち上がりながらも状況が掴めずにうろたえている氷河の許へ
存在を示しながら近づいた
「な・・・なに？！あ・・・あなたは
あなたは わたしの師・・・水瓶座のカミュ！！」
「そうだ 久しぶりだな 氷河よ」
そうして
東シベリアで６年もの歳月を共にした
１人の師と
１人の弟子の
悲壮な師弟対決の幕が
静かに
静かに
上がり始めた
１２宮の戦い まだ序盤の頃である
― 終 ―