幕開け
― １ ―
『１２宮に集結せよ』
聖域の教皇から発せられたそれは 黄金聖闘士全員にかけられた異例の召集だった
今まで個々に召集されることはあっても 全員が同時に召集されることは
その必要がなかった為にありえなかった
とはいえ 召集に応じない者や行方が判らぬ者もいて
１２人全員が揃うことは不可能だった
おおかたの黄金聖闘士が１２宮に集結してまもなく
教皇の危惧に違わず アテナと称する娘を擁した４人の青銅聖闘士たちが
意気揚揚と１２宮に乗り込んできた
その彼らが双児宮に入ったという報がもたらされた頃
静かに自分の宮を離れた黄金聖闘士がいた
宝瓶宮を守る黄金聖闘士 アクエリアスのカミュである
「自分の宮をほっぽって 何処へ行くつもりだ？アクエリアス！」
自分の預かる磨羯宮を通ろうとするカミュの行く手を
山羊座の黄金聖闘士カプリコーンのシュラは 左腕をスッと伸ばし遮った
同時に空間に亀裂が走り その衝撃でカミュの前髪が数本散る
「シュラ･･･」
「先程何を血迷ったか青銅聖闘士のガキたちが この１２宮に乗り込んで来たらしい
こんな上まで来れるとは思わんが 一応非常事態だ
自分の宮を離れん方がいいぞ」
「いや・・・その血迷った中に身内がいるのでな
これ以上迷惑かけないよう始末してくる」
「そうか 早めに戻ってこいよ」
シュラは納得して 伸ばしていた左腕をおさめた
「ああ」
カミュは表情を変えずに そのまま磨羯宮を後にした
極寒の東シベリアの地で ６年間手塩にかけて育てた愛弟子 氷河よ・・・
私はおまえに正義こそ教えたが 聖域に反逆することなどいつ教えた？
聖域より教皇の許可を受けて授けたそのキグナスの聖衣を纏って
おまえは 愚かにも忘恩の徒に成り下がるというのか？！
何故だ 氷河よ？
・・・まさか・・・
カミュは厳しい眼差しで人馬宮を通り抜け
天蠍宮へと向かった