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今になって思えば

シオンはあのとき既にサガの謀反を予想していたのだろう

前聖戦でアテナが施したハーデスへの封印も 数年後には解けると分かっていたに違いない

だからこそ黄金聖闘士が揃う必要が・・・

「・・・さまっ!ムウさまってば!」

気がつくと貴鬼が心配そうに覗きこんでいた

「どうしましたか?」

「どうしましたか?は おいらのセリフだよ!ムウさまったら話の途中で黙ってしまうんだもん」

「ああ すみません ええとどこまで話しましたっけ」

「乙女座の黄金聖闘士が聖衣をもらったっていうところまでだよ」

「そうでしたね」

「つまりシャカが一番早くて5歳で聖闘士になったんだね はあ〜すごいや・・・」

肩を落とす貴鬼を見て ムウは腰を上げ 陽をややまぶしそうにして手をかざすと暖かく言った

「早くなれなければ聖闘士になれないというものではありません

星矢や紫龍たちは13,4の頃です」

「う・・・ん そうだけど・・・アイオリアやミロとかも小さいうちに黄金聖闘士になったんですか?」

貴鬼も立ち上がって質問をした

「彼らは・・・確か私の少し後でしたね」

「じゃあ・・・えっと例えば黄金聖闘士になったのが一番遅かったのは?」

身を乗り出して質問する貴鬼の様子ににつられることなく ムウは冷静に答えを返した

「あの頃はほぼ同時に黄金聖闘士が誕生していましたからどうでしょう・・・はっきりは分からないですね」

「ええ〜みんな同じ頃に?!」

「ええ」

「そっかあ・・・じゃあやっぱりもうおいらの歳からじゃ黄金聖闘士にはなれないんだね・・・」

「そんなことを・・・フッ それで落ち込んでいるのですか?」

「うん・・・おいらもムウさまみたいに黄金聖闘士になりたいって思ってたんだ・・・」

「貴鬼 いいですか」

ムウは口調を引き締めて言葉を続けた

「聖闘士の聖衣の色は一概に強さを示すものではありません

どの聖衣をまとっていようと 女神とこの地上を守ろうと心から思い

正義の為に尽力をつくすことが大切なのです」

「はい・・・」

それは分かっているけれど・・・という貴鬼の表情を読み取り

ムウは少し声を和らげると 説明を続けた

「あの頃は・・・私たちが聖闘士になる前は 黄金聖闘士がライブラ、ジェミニ、サジタリアスしかいませんでした

そんな中 数年後に聖戦がくることは予想されていました

私が何を言いたいか 分かりますね?」

「いえ・・・あまり・・・」

「つまり黄金聖闘士が揃う必要があったのです というより聖戦に備えて揃わなくてはならない時期でした

しかし今は違います

冥界との大きな聖戦も終わり・・・

聖域を建て直し落ち着くまで とアテナは一時的に黄金の我らも蘇らせてくれました」

言葉が途中で一瞬途切れ ムウがやや遠い目をしたことに貴鬼は気がついたが

ムウはそのまま何事もないように言葉を続けた

「おまえは焦ることはありません 自分のペースでしっかり目指すことです」

「はい・・・」

貴鬼の返事はまだ重たかった

ムウはコップに注ぎ直された水を飲み干し

そのコップを貴鬼に返しながらさりげなく一言加えた

「え?」

貴鬼は不意にかけられたその言葉をもう一度聞きたくて わざと聞き返そうとしたが

ムウは軽く微笑むと

「訓練に戻りますよ」

と背を向けた

「は、はいっ!」

貴鬼は今度は ぱあっと表情を明るくしてムウの背を追った

追いながら貴鬼の心の中ではムウの言葉が反芻した

『私のあとを継ぐのはおまえです』 


そんな貴鬼の明るい気持ちを後押しするかのように

二人の後を追うように

ジャミールの風が爽やかに吹き抜けた


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